参議院 憲法審査会 第7号
○田島麻衣子君 立憲民主・無所属の田島麻衣子です。 令和三年改正国民投票法附則第四条第二号の検討条項に関して、会派を代表して意見を述べます。 今年春に行われた朝日新聞と大学研究室の共同調査で、憲法改正を最優先と答えた有権者はたったの一%でした。多くの国民が望んでいるのは憲法改正ではありません。昨今の物価高対策や仕事、子育て、介護など、国民の明日の生活不安に対する支援です。国民の十分な理解のないまま憲法改正に向けた手続の整備を拙速に進める動きに、私たちは抗議をいたします。 そして、本審査会に付託されている国民投票法改正案に関して言えば、令和三年改正附則第四条第二号の検討条項についての真摯な議論と法改正なくして改憲発議はありません。この点は冒頭強く申し上げたいと思います。 まず、本改正案で引き続き附則に残された附則第四条第二号イ、ロ、ハの法規範性について意見を申し述べます。 この点に関し、衆議院においては、第四条が掲げる施行後三年という検討期限のめどが過ぎていることから、法規範性は失われたとする見方があるという見解が自民党の新藤筆頭幹事によって紹介されました。 しかし、施行後三年をめどにという規定を引用しながら、これまで絶えることなく何度もCM規制等に関する法改正が国会で求められていること、加えて、令和三年改正時、自民党の中谷提案者が確実に三年で結論を出さなければならないというものではないと述べていること、また何より、今回の法改正でも附則第四条は一号、二号も形式的な修正がなされていることなどから、これらは今も法的な拘束力を持つ法規範であると考えます。もしそうでないというのであるならば、その根拠を文書にて本審査会に提出することを求めます。 次に、附則第四条第二号イ、ロ、ハで定められた事項は法改正が必要である旨の意見を述べます。 この検討条項については、当該条項の起草者であり、また修正案の提出者である立憲民主党の奥野議員が、令和三年六月九日の参議院憲法審査会で、憲法からの要請でありますから、きちんと公平公正が担保できるように法律で定める事項だと発案者として考えていますと述べているとおり、法律事項として法改正が必要な内容です。 国民投票法が制定された二〇〇七年から二十年近くを経て、AIやインターネット広告の激増など、環境が大きく変化した今、投票の自由と投票の公正公平のバランスを回復するためには法改正が必要であり、まさにこの理由から、自民党の中谷議員も同日に、私としては個人的に法改正が必要ではないかと考えていると答弁したところと理解しております。 思うに、憲法改正国民投票は、主権者である国民がその自由意思に基づいて、最高法規の憲法を定める主権の行使であり、憲法改正国民投票における公平公正の確保は国民主権原理からの要請です。 以上のことから、附則第四条第二項の検討条項は、その実現においては法改正を必須と定め、それらがなされるまで改憲発議を行うことはできない趣旨の条文であることを申し上げます。 次に、附則第四条第二項の検討条項に関して、各論に対する意見を述べます。 まず、イで挙げられた広告規制について、今年二月の衆議院選挙ほどインターネットを利用した有料広告が共通課題として認識された選挙もありませんでした。 例えば、高市総理が日本列島を強く豊かにと語りかけた動画の再生回数は、公示前日の公開から投開票日までに約一億六千万回にも上がりました。明らかに、確かに、現行公選法では、政党や政治団体が政治活動として有料広告を出すことは認められています。とはいえ、余りに大きな再生回数に報道機関等から選挙の公正についての懸念が示されたことは、皆さんの記憶にも新しいのではないかと思います。 加えて、現行の公選法では、候補者個人に有料ネット広告は全面的に禁止されていますが、さきの衆議院選挙では、現在の政務三役を含む当時の多くの候補者が、自身が代表が務める党選挙区支部の名義を使い、事実上の個人宣伝を目的とした動画広告を選挙期間中も有料で大量に配信していました。 国民投票法では、テレビCMにおけるCMは投票十四日前まで、また、ネットCMについては一切規制がありません。国の最高法規である憲法の改正案が対象となる国民投票において、インターネット上の有料広告規制が存在しないことは大きな欠陥であると言わざるを得ません。 我々立憲民主党は、憲法改正の前提となる国民投票においては、政党等によるネットCMを一律禁止し、その他のものによるネットCMについては、ネット広告事業者にCM掲載基準の策定等の努力義務を課す国民投票法改正案をまとめています。 次に、ロでも述べられた規制に関する、資金に関する規制について意見を述べます。 近年の大型選挙では、外国勢力が資金を投じてSNS上で情報操作を行う介入が大きな脅威として浮き彫りになりました。加えて、先ほど述べた約一億六千万回再生を記録した高市総理による動画は数億円が必要だったのではないかという指摘もあります。 また、複数の施設で、十万台を超えるスマートフォンの基板を集めパソコンにつないだスマホ農場と呼ばれる拠点で、実態のない再生数や表示回数をつくり販売する新たなビジネスモデルが報道により明らかになりました。 憲法改正に関する国民の判断が資金力の多寡で左右される環境を放置することは断じて許されません。 立憲民主党は、国民投票運動等の支出上限の策定、政党等による詳細な収支、支出、収支報告書の提出などが必要と考えています。 次に、ハで述べられたインターネット等に関する規制について意見を述べます。 近年は、AI技術の劇的な進展で、事実に基づかない発信が大量に作成、投稿できるようになり、特定の候補者をターゲットにした誹謗中傷動画も多く投稿されています。前述の資金力と合わせれば、少数者が世論や国民投票の結果を左右できる時代に入りつつあることを我々は強く認識する必要があります。 七月十三日に成立した公職選挙法等の改正で規定された最低限のルールすらない今の国民投票法で憲法改正の発議を行うことは非常に危険です。国民投票協議会の機能強化等を通じて、国民投票運動の公平公正を確保するための方策も必要です。 最後に、最低投票率制度の必要について申し添えます。 平成二十六年改正時、本審査会では、最低投票率制度の意義、是非の検討についての附帯決議が付されましたが、その後、結論を得るには至っておりません。仮にほんの僅かな有権者しか投票に行かなかった場合でも、改正憲法は正式に成立してしまうのでしょうか。こうした点も、今の国民投票法の議論で圧倒的に足りない論点です。 以上、るる申し上げましたが、最後に結論を申し上げます。 附則第四条第二項に関する検討においては、選挙の公正公平確保の観点から法改正を強く求めてきた国会における議論の積み重ね、並びに今回改めて申し上げたインターネット及びAIの急速な発展とその悪用、弊害など、国民の投票行動をめぐる劇的な情勢の変化等を適切に踏まえる必要があります。 主権者たる国民の自由意思がゆがめられ、国民投票の結果が正当性を欠くこととならないよう、今申し上げた論点を含めた法改正が必須です。そして、これらの法改正が適切になされないうちは、憲法が要請する国民主権原理の観点からも憲法改正発議はしてはならない、こう強く申し上げまして、私の意見表明とさせていただきます。